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全都立学校で生成AIを活用した学習がスタート!「都立AI」の初回授業モデル指導案の内容とは?

東京都教育委員会が令和7年3月に提示した「生成AI研究校 初回授業モデル指導案」は、教育現場における生成AI活用の第一歩を示すものです。

本稿では、この指導案を基に、生成AIの初回授業のポイントや具体的な活用法をまとめました

生成AI初回授業のねらい:基本理解と体験を通じた学び

指導案では、まず生徒が生成AIの基本的な仕組みを理解し、その活用方法と留意点を体験的に学ぶことを重視しています。

単に技術的な側面だけでなく、生成AIが身近な場面でどのように活用されているかを紹介し、生徒の関心を高めることを目指します。

また、個人情報やセキュリティに関する注意点も初期段階で伝えることの重要性が示唆されています。

早い段階から個人情報やセキュリティに関する注意点を学ぶことは、子どもが大人になっていくうえで生成AIを安全に活用することにつながると思います。

すでにビジネスの現場では、生成AIがどんどん活用されているだけに、学校現場でも生成AIを学ぶというのは当然のことなのかもしれません。

授業モデル①:基礎的理解を重視した授業(全1時間)

このモデルでは、生成AIの基礎を理解することに重点を置いています

本時の目標

  • 生成AIの基本的な仕組みを理解する。
  • 生成AIを使った簡単な会話を体験し、その効果や注意点を理解する。
    • ネガティブな側面だけでなく、有効な活用例にも目を向けさせることが重要です。

授業の流れ(例)

  • 導入(10分):生成AIの概要
    • 身近な生成AIの活用事例を紹介します。
    • 生成AIの仕組み、個人情報保護、セキュリティについて簡単に説明します。
    • 実際にプロンプトを入力し、結果を確認するデモンストレーションを行います。
    • 学校生活で想定される活用場面を紹介します。
  • 展開①(15分):生成AI体験
    • 生徒が自由にプロンプトを入力し、検索エンジンとの違いや、同じプロンプトでも毎回結果が異なることなどを体験的に学びます。
    • 求める回答を得るためには、追加のプロンプトで調整が必要であることを理解させます。
    • または、「生成AIを使う時に注意すべき点は?」といった問いかけから、グループで注意点を検討する活動も有効です。
  • 展開②(20分):ハルシネーションへの理解
    • 生成AIの回答に含まれる誤り(ハルシネーション)に焦点を当て、なぜそれが起こるのか、起こりやすい要素は何かを検討します。
    • 明確な指示や目的の伝達が、効果的な指示に繋がることを学ばせます。
    • 数理的処理、最新情報、ローカル情報などは不得意な場合がある一方、Web検索を基に精度の高い回答を生成できるAIも存在することを伝えます。
      • ただし、言語モデルの高性能化により、ハルシネーションは徐々に減少傾向にあることにも触れます。
  • まとめ(5分):注意点の共有
    • 生成AI利用上の注意点やプロンプトの工夫を再確認します。
    • 関連資料(例:「生成AIを上手に使いこなそう」リーフレット)にも言及します。

1時間の中に生成AIに関する基本的なことが含まれており、体験するだけでなく、ハルシネーションへの理解に重点が置かれているところが興味深いです。

授業モデル②:応用的な思考を重視した授業(全1時間)

このモデルでは、生成AIの効果的な活用方法を模索し、より応用的な思考や考察を行うことを目指します

本時の目標

  • 生成AIの特性や応用事例を理解する。
  • プロンプトの改善を通して効果的な活用や留意点について考える。
    • ポイントを意識したプロンプトと、敢えて外したプロンプトの出力結果を比較し、その差異を実感させることが重要です。

授業の流れ(例)

  • 導入(10分):生成AIの仕組みの理解
    • 教師の実演を通して、生成AIの基本的な仕組みや情報処理の流れを簡潔に説明します。
    • 個人情報に関する注意点やセキュリティについて改めて説明します。
  • 展開①(15分):応答の多様性の体験
    • 各自がプロンプトを入力し、対話によって様々な答えが生成されることを体験します。
    • 出力の違いやハルシネーションを観察することで、効果的な活用場面を考察できるようにします。
  • 展開②(20分):プロンプト設計と考察
    • 展開①の出力結果を比較し、プロンプトの改善案を考案します。
    • 効果的なプロンプトを作成するための工夫や基準を整理させます。
      • プロンプト作成のポイント
        1. タスクの目的を明確にする。
        2. 簡潔で具体的な指示を出す。
        3. 必要な情報や背景を提供する。
        4. 回答の形式を指定する(数、項目など)。
        5. 疑似的な役割や文体(口調)を指定する。
  • まとめ(10分):検討結果の共有
    • 生成AIの利点と現時点での限界を整理します。
    • 効果的な活用場面やプロンプトについて共有します。
    • 生徒の検討結果を活かして、プロンプト作成のポイントを示します。

生成AIを使いこなすうえで重要なプロンプトについてしっかり学べるのは嬉しいでしょうね。将来的にプロンプトエンジニアを目指す子どもが生まれるきっかけになるかもしれません。

授業モデル③:特別支援学校での授業(全1時間)

特別支援学校向けのモデルでは、生徒が生成AIの基本的な仕組みを理解し、活用方法と留意点を体験的に学ぶことを主眼としています

本時の目標

  • 生成AIの特徴(仕組み、間違い、注意点)を知る。
  • 生成AIを使う楽しさを体験する。

授業の流れ(例)

  • 導入(10分):生成AIの仕組み
    • 教師が簡単なプロンプトを入力し、文章が生成される過程を視覚的に確認します。
  • 展開①(15分):基本的な理解
    • 生成AIが膨大なデータを学習し、指示に応じて出力を行うことを、絵や簡単な図を使って説明します。
    • 生徒にわかりやすい例を用いてAIの特性を説明します。
  • 展開②(15分):生徒が生成AIを体験
    • 複数のキーワードを使って詩を作成するなど、生成AIを使う楽しさを体感できる活動を行います。
  • 展開③(15分):注意点の理解
    • ハルシネーション(間違い)が発生することを体験します。教師が意図的に難しいプロンプトを入力し、誤った回答を提示後、生徒にその理由を話し合わせるなどの活動が考えられます。
  • まとめ(5分):振り返り
    • 文章生成AI以外の生成AI(画像、音楽など)についても簡単に説明し、実演を交えながら生成AIの多様な可能性について話し合います。

配慮事項・ポイント

  • 生徒が体験しやすいプロンプトを工夫する。
  • 視覚教材を活用し、仕組みや注意点をわかりやすく説明する。
  • 生徒の興味を引き出す楽しいテーマを設定する。
  • ハルシネーションについて認識を広げつつ、不安を与えないよう配慮する。

特別支援学校向けのモデルは、生徒が楽しく学べる体験感を大切にし、より丁寧に指導する意図がうかがえます。生成AIを通して、自分の気持ちや考え、イマジネーションを生み出してくれることでしょう。

生成AIのさらなる活用に向けて:「生成AIを使ってみよう!」

初回授業後には、生徒が自由に生成AIを使ってみることを推奨しているようです

校務や教科学習など、様々な場面で、より効率的・効果的な取り組みに繋がる可能性が示唆されています。

実践プロンプト例

  • 校務の効率化
    • 外国籍の問い合わせに対し、多言語で迅速かつ分かりやすい返信を作成する。
    • 面接日程の調整を自動化する。
  • 教科学習での活用
    • 現代国語: 生徒が書いたエッセイを生成AIで編集し、編集結果を教材として利点と限界を学ぶ。文章作成力そのものではなく、編集能力の育成を目指す。
    • 数学: 難関大学の過去問などを生成AIに解かせ、正答に導く過程でプロンプトを試行錯誤することにより、問題への理解を深める。「教える」ことを通じて、数学的な理解を深め、プロンプト作成技能も向上させる。
    • 化学: 生成AIが作成した実験計画を批判的に検討することで、実験手順の妥当性や安全性について多角的に考える。
    • 国語(特別支援学校): 夏休みの思い出を基に生成AIで俳句を作成し、相互評価を行う。AIの作品を教材とすることで、忌憚のない意見交換を促し、表現技法について学ぶ。

この指導案は、生成AIを教育に取り入れる上での初期段階の指針となるものです。

各学校や生徒の実態に合わせて内容を調整し、生成AIとのより良い付き合い方を探求していくことが期待されます。

まとめ

「生成AI研究校 初回授業モデル指導案」についてまとめてみました。

指導案では、主に3つの異なる初回授業モデルが提案されています。

  1. 基礎的理解を重視した授業:ここでは、生成AIの概要、身近な活用例、基本的な仕組み、そして個人情報保護やセキュリティといった基本的な知識の習得に焦点が当てられています 。実際にプロンプトを入力する体験や、生成AIの回答に含まれうる誤り(ハルシネーション)についての理解も促します 。  
  2. 応用的な思考を重視した授業:このモデルでは、生成AIの特性や応用例をより深く理解し、効果的なプロンプト設計やその改善について考察することを目指します 。応答の多様性を体験し、タスクの目的明確化や具体的指示といったプロンプト作成のポイントを学びます 。  
  3. 特別支援学校での授業:生徒が生成AIの仕組みや注意点を視覚教材などを通じて理解し、何よりも「生成AIを使う楽しさ」を体験することに主眼が置かれています 。ハルシネーションについても触れつつ、生徒が不安を抱かないような配慮が求められます 。

これらは、生成AIを単なるツールとしてではなく、生徒の編集能力育成、問題解決能力の深化、主体的学習態度の醸成などに繋げる可能性を示唆しています。  

総じて、この指導案は、生成AIを教育現場へ導入する際の初期ステップとして、生徒の理解度や状況に応じた柔軟なアプローチと、実践的な活用を通じた学びの重要性を強調しています。

授業科目の中に「生成AI」という科目が追加される日もそう遠くないのかもしれません

また、教員の担当科目に「生成AI」ができて、「生成AIの先生」が登場することになるのでしょうか?

大人よりも何倍も吸収力がある子どもたちが、安全に生成AIを活用できるように教育現場に取り込むことは非常に大切といえそうです。

この記事は私が書いたよ!

kumasan

さまざまな生成AIを楽しんでいます! 趣味はエレキギターということもあり、音楽系の生成AIにかなり注目しています。また、日常やビジネスで使える便利な生成AIツールや、新しく登場する生成AIにどんどんチャレンジ中! みなさんに生成AIの情報をお届けして、その便利さを伝えたいです!

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